最近、「子どもが本を読まなくなった」というニュースを目にしました。
ベネッセ教育総合研究所と東京大学の調査によると、読書をしない小中高生が全体の半数に上り、この10年で1.5倍にも増えているそうです。
スマホや動画、SNSなど手軽に楽しめる情報があふれる今、本を開く時間は確かに減っているのかもしれません。
そんな記事を読んでいて、ふと頭に浮かびました。
「そもそも、どうして“読書週間”なんて作られたんだろう？」
毎年10月の終わりから始まる「読書週間」。
当たり前のように耳にする行事ですが、その始まりや背景を知っている人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、読書週間が生まれたきっかけやその時代背景、そして今に残る意味を、ゆっくりたどっていきます。
読書週間とは？その目的と意義
「読書週間」とは、毎年10月27日から11月9日までの2週間にわたり、全国で本に親しむ活動を呼びかける文化行事です。
主催は「公益社団法人 読書推進運動協議会」。
出版社、書店、新聞社、図書館などが協力し合い、戦後まもない頃から続いてきた“読書の祭典”ともいえる取り組みです。
読書週間の目的は、とてもシンプル。
「一人でも多くの人に、本を手に取るきっかけをつくること。」
忙しい日常の中で、ページをめくる時間を少しでも取り戻してもらう――そんな願いが込められています。
特定の世代や職業に限らず、誰にでも開かれた運動であり、「読書を通じて心を豊かにする」という想いが今も受け継がれています。
読書週間の意義
本を読むという行為は、単なる知識の吸収ではなく、「自分の心と向き合う時間」を持つことでもあります。
読書週間は、その大切さを社会全体で思い出すための“節目”のような存在。
本を読む人が減ってきた今だからこそ、この運動は新しい意味を帯びているとも言えます。
読書週間が推進する文化
読書週間の背景には、「言葉を通じて人とつながる文化を守りたい」という願いがあります。
戦後の混乱期に始まったこの活動は、教育や娯楽が十分でなかった時代に、“心の栄養”としての本を広めようという思いから生まれました。
学校や地域、企業、そして家庭でも読書を楽しむ機会を広げることで、世代を超えた“読書文化”を育ててきたのです。
読書週間の期間と名称
当初は「図書週間」と呼ばれていましたが、のちに「読書週間」へと改称されました。
期間が10月27日から11月9日に設定されたのは、「文化の日（11月3日）」を中心に据えるため。
この時期は“秋の夜長”と呼ばれ、本を読む時間にぴったり。
自然と読書への意識が高まるよう、季節感にも寄り添った設定になっています。
読書週間の歴史と始まり
「読書週間」が始まったのは、**戦後まもない1947年（昭和22年）**のこと。
終戦からわずか2年――物資も情報も乏しい時代に、人々の心の支えとなる“本”の力を信じて立ち上がった人たちがいました。
それが、現在の主催団体でもある**「読書推進運動協議会」**の前身となるグループです。
出版社や書店、新聞社、図書館関係者などが協力し合い、
「読書を通じて、戦後の荒廃した社会に心の豊かさを取り戻そう」
という願いからスタートしました。
戦後に始まった読書推進運動
当時の日本は、食料も住まいも足りず、文化的な活動を楽しむ余裕がない状況でした。
そんな中で、“心を育てる活動”として注目されたのが読書。
「知識ではなく、希望を取り戻すための読書」という理念のもと、新聞社が呼びかけ、出版社や教育関係者が賛同して全国に広がっていきました。
読書推進運動協議会の設立と活動
運動が軌道に乗るにつれ、活動を継続・発展させるための組織が必要になりました。
その流れで誕生したのが、公益社団法人 読書推進運動協議会です。
今も毎年の標語募集やポスター制作を行い、全国の図書館や書店を通じて読書文化を伝え続けています。
※公式サイトでは、最新のポスターや標語も紹介されています。
公益社団法人 読書推進運動協議会 公式サイトはこちら
「心に本を」の願いが込められた時代背景
「読書週間」という名前には、“一冊の本が人の心を変える力を持っている”という信念が込められています。
テレビもスマートフォンもない時代、人々は文字を通して世界とつながっていました。
読書は、知識を得るだけでなく「希望を見いだす時間」でもあり、それが国を再び立て直す力になる――そんな祈りにも似た想いが、この運動を支えてきたのです。
読書週間の意義を今に考える
本を読む人が減った――そんな言葉を、最近よく耳にします。
実際、先日の調査では「読書をしない小中高生が半数に上る」と発表され、
10年前に比べて1.5倍も増えたことが話題になりました。
スマートフォンひとつであらゆる情報が手に入る現代、
「文字を読む」こと自体の価値が見えづらくなっているのかもしれません。
それでも、読書週間が今も続いている理由ははっきりしています。
この運動は、単なる「本を読む習慣づけ」ではなく、
“人と人とのつながり”をもう一度見つめ直すための文化運動だからです。
なぜ今も続いているのか
読書週間が70年以上ものあいだ続いてきたのは、
「本を読む時間は、人を育てる時間」だからです。
活字を追うことで、他人の考え方や感じ方にふれ、
想像力や共感力が育まれます。
情報の洪水の中で、速く、浅く知ることは簡単になりました。
けれども、本を通じて“自分の心で考える時間”は、
デジタル時代ほど大切になっているのかもしれません。
読書離れが進む今だからこそ
今の子どもたちは、日常の中に「静かな時間」を持つことが難しくなっています。
通学途中も、家に帰ってからも、スマホの通知や映像が絶えず流れ、
“立ち止まって考える”時間が削られているのが現実です。
読書週間の目的は、そうした時代に「少し立ち止まって、本と向き合う時間を取り戻そう」という呼びかけ。
本を読むことが競争でも義務でもなく、
“心を休めるための小さな習慣”
だということを思い出させてくれます。
“読む時間”がくれる静かな豊かさ
ページをめくる時間には、不思議な力があります。
誰かの言葉に共感したり、自分の過去を思い出したり、
まだ見ぬ世界に思いを馳せたり。
読書週間の原点にあった「心に本を」という言葉は、
今の時代にも通じる優しいメッセージです。
本を読むことは、他人と競うことではなく、
自分の中に静かな豊かさを育てること。
その意味で、読書週間は“過去の文化運動”ではなく、
今を生きる私たちに向けた、時代を超えたメッセージなのです。
読書週間をもっと楽しむために
読書週間というと、少し真面目で堅い印象を持つ人もいるかもしれません。
でも本来は、“みんなで本を楽しもう！”という明るいキャンペーンなんです。
この期間には、学校・図書館・書店などでさまざまなイベントが開かれ、
いつもより少しだけ本に近づけるチャンスがたくさんあります。
学校や地域の読書イベント
全国の小中学校では、この時期になると「朝読書」や「読書スタンプラリー」など、
楽しい仕掛けがいっぱい。
図書委員が手作りポスターを掲示したり、先生が子どものころに読んだ本を紹介したりと、
“本を通じてつながる時間”が生まれています。
地域の図書館や書店でも、読み聞かせ会や展示コーナーなど、
普段よりちょっと特別な雰囲気。
なかには「貸出冊数アップキャンペーン」や「本との出会いフェア」など、
イベント感覚で楽しめる取り組みもあります。
また、春には子ども向けの「こども読書週間」も開催されています。
期間は4月23日から5月12日までで、家庭や学校で読書を楽しむきっかけづくりとして全国に広がっています。
読書週間と同じく、「本を通じて心を豊かに」という願いが受け継がれています。
家庭でできる小さな取り組み
忙しい毎日でも、読書週間をきっかけに“本のある時間”をつくってみませんか？
たとえば――
- 夜、スマホを見ない時間を15分だけ決めてみる
- 親子で同じ本を読んで、感想を話してみる
- 読みたい本リストをノートに書き出してみる
たったそれだけでも、いつもの生活が少しやわらかくなる。
“本を読むこと”は、心を整えるリセット時間でもあります。
読書週間におすすめの児童書
最後に、児童書好きな方へ。
絵本ではなく、少し成長した読者にも響く名作をいくつか挙げてみます。
- 『『車のいろは空のいろ』（あまんきみこ）
静かな情景描写と、やさしい言葉が胸に残る短編集。 - 『エルマーのぼうけん』（ルース・スタイルス・ガネット）
冒険のわくわくと勇気が詰まった永遠のロングセラー。 - 『おしりたんてい』（トロル）
ユーモアたっぷりの推理シリーズ。笑いながら読書の楽しさに出会える一冊。 - 『ドリトル先生航海記』（ヒュー・ロフティング）
動物と話せるお医者さんの冒険物語。想像力を広げてくれる名作シリーズ。 - 『西の魔女が死んだ』（梨木香歩）
自然の中で生きる知恵と、静かな心の成長を描いたロングセラー。
どの本も、年齢を問わず“読む時間”のすばらしさを思い出させてくれます。
気になる一冊を手に取って、秋の夜長にゆっくりページをめくってみてください。
まとめ：本を読む時間を未来につなぐ
読書週間は、戦後の混乱の中で生まれた「心を取り戻すための運動」でした。
それから70年以上たった今、社会は豊かになり、情報もあふれています。
それでも、本を読む時間の大切さは変わっていません。
ページをめくるときの静けさ。
言葉のひとつひとつに心が動く感覚。
それは、どんな時代になっても失われない“人の力”です。
スマートフォンやAIが生活を支える今だからこそ、
本を読むという行為には、立ち止まって自分と向き合う時間という価値があります。
読書週間は、その原点を思い出させてくれる年に一度の節目。
そして――
本を読む時間は、ひとりの楽しみであると同時に、
未来の誰かの心を育てる“種まき”でもあります。
今日、ページをめくるその瞬間が、
遠い明日につながっていく。
そんな想いを胸に、
この秋も、自分のペースで一冊を手に取ってみませんか。
